AIO・LLMO対策のROI(投資対効果)算出方法・考え方|ブランド推薦を売上につなげる効果測定・KPI設計

AIO・LLMO対策を検討するとき、社内でよく出てくるのが「結局、いくら売上につながるのか」「ROIはどれくらいなのか」という質問です。当社でも多くの企業様を支援してきましたが、特にROIの部分の社内説明は非常に難しいケースが多くありました。
上司や経営層への説明、予算申請、稟議では、「ChatGPTで自社が推薦されるようになります」という説明だけでは、投資判断の材料として十分ではありません。
一方で、AIO対策、とくに生成AI上でのブランド推薦は、広告のように「100万円使えば◯件獲得できる」と単純に計算できるものでもありません。
結論からいうと、AIO対策のROIは、AI上でのブランド推薦率そのものではなく、AIO対策によって生じた「増分利益」と「投資額」の関係で評価する必要があります。基本式は次の通りです。
AIO対策のROI=(AIO対策による増分利益-AIO投資額)÷AIO投資額×100
ただし、AIO対策では「AIでブランドを知る→後日ブランド名で検索する→サイトを訪問する→問い合わせる」といった行動が起こる可能性があるため、増分利益を完全に計測することは簡単ではありません。そこで重要になるのが、ブランド推薦→検討→行動→商談・購入→売上という一連の流れをKPIとして設計することです。
本記事では、AIO対策、とくにブランド推薦施策のROIをどのように考えればよいのか、上司や経営層への説明・稟議にも利用できる形で整理します。
AIO・LLMO対策のROIとは何か
まず、「ROI」という言葉を正確に定義しておく必要があります。ROI(投資対効果)は、投資に対してどれだけ利益を得られたかを表す指標です。

たとえば、次のような数値はAIO対策の成果を測るうえで役立ちますが、いずれもROIそのものではありません。
- ChatGPTで50%推薦されるようになった
- 市場内での露出シェアが30%になった
- AIから月500セッション流入した
AIO対策では、指標を次のような階層で考えると整理しやすくなります。
| 段階 | 主な指標 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| AI露出 | ブランド推薦率、言及率、露出シェア、引用率 | AIの回答内で自社が候補に入っているか |
| 検討 | 指名検索、AI経由の流入、ブランドページ閲覧 | 自社への関心につながっているか |
| 行動 | 問い合わせ、資料DL、無料トライアル、商談 | 具体的な行動につながっているか |
| 売上 | 受注、売上、粗利、LTV | 財務成果につながっているか |
| ROI | 増分利益÷投資額 | 投資に見合った経済価値を生み出したか |
ここで重要なのは、上流の指標ほど測定しやすい一方、経営成果との距離が遠くなるということです。ブランド推薦率が上昇したからといって、それだけで売上が増えたとは言えません。
逆に、売上だけを見てしまうと、AI上で起きている変化を十分に把握できない可能性があります。そのため、AIO対策では上流から下流までを一つのKPIツリーとして管理する必要があります。
AIO対策のROIが測りにくい理由
生成AIはクリック前の意思決定に関与する
AIO対策のROIが難しい最大の理由は、生成AIがユーザーの「クリック前」の意思決定に関与するからです。
従来のSEOでは、Google検索→Webサイトをクリック→サイト閲覧→問い合わせ→売上という経路を比較的追跡しやすい構造になっていました。一方、生成AIでは、ChatGPTなどに質問→複数ブランドを知る→AI上で比較する→その場ではサイトを訪問しない→数日後にブランド名を検索→公式サイトを訪問→問い合わせ、という行動も考えられます。
この場合、アクセス解析上は「Googleのオーガニック検索」や「直接流入」に見える可能性があります。しかし、最初にブランドを認知したきっかけは生成AIだったかもしれません。Forresterの調査番組でも、BtoB購買者が生成AIをベンダー調査、比較、意思決定の検証など購買プロセス全体で利用するようになり、購買活動の一部が企業から見えない場所で行われていると指摘されています。同社が公開しているコンテンツ戦略に関する分析でも、同様の傾向が取り上げられています。
AIO対策のROIを測りにくくしているもう一つの要因が、プロンプトの「市場規模」を把握しにくいことです。SEOであれば、対象キーワードの月間検索ボリュームをある程度把握できるため、「このキーワードで上位表示されれば、これくらいの流入が見込める」という期待値を置くことができます。
一方、AIO対策で計測対象とするプロンプトについては、そのプロンプトが実際に生成AIへ何回投げられているかを示す公開データがありません。そのため、ブランド推薦率が改善しても、それが多くのユーザーに聞かれている質問なのか、ごく一部のユーザーしか聞かない質問なのかを区別しにくいという問題があります。
ただし、SEOの検索ボリュームがまったく参考にならないわけではありません。生成AIへの質問とGoogle検索のキーワードには重なる部分も多く、既存の検索ボリュームデータは、プロンプトの重要度を推測するための一つの手がかりになります。
一方で、生成AIには「比較して」「どっちがいい?」「初心者向けに教えて」といった、キーワードとしては検索されない会話的な質問や深掘り質問も多く投げられています。こうした質問はSEOのキーワードデータには表れませんが、実際の購買検討プロセスでは重要な役割を果たしている可能性があります。
そのため、AIO対策で計測するプロンプトを選ぶ際は、検索ボリュームなどの定量データを参考にしつつ、営業現場やカスタマーサポートに寄せられる質問、顧客インタビューなどの定性情報も組み合わせて設計することが望ましいといえます。プロンプト設計の具体的な手順は、LLMO・AIOのプロンプト設計戦略・手順を解説した記事でも取り上げています。
AIはすでにブランド選定・比較に使われている
AIO対策のROIを考えるうえでは、そもそも生成AIが購買プロセスに影響するのかを確認しておく必要があります。
BtoBではForresterの調査で、購買者の94%が購買プロセスでAIを利用していると報告されています。さらに、生成AIや会話型検索を、他の情報源より重要または意味のある情報源として挙げる購買者も増えています。同社がForresterの他の調査でも、95%のBtoB購買者が購買プロセスを支援するために生成AIを利用する予定だとされており、「利用意向」から「実際の利用」へと移行してきていることが分かります。
BtoCでも同様の変化が起きています。OpenAIが2026年3月に公開した記事では、ChatGPTの商品探索機能について、ユーザーがChatGPTを使って商品を「調べる」「比較する」「何を買うか検討する」ケースが増えていると説明されています。
国内向けの調査でも同様の傾向が見られます。当社メディアリーチが実施した調査では、若年層の生成AI利用者の約3割が、生成AIで商品・サービス・企業を検索・比較した経験があると回答しています。
Googleも、生成AI検索機能「AIモード」について、複雑な質問や比較を行う用途で利用されていることを公表しています。2025年時点でAIモードのクエリは通常のGoogle検索より平均して約2倍長く、商品比較など複雑なタスクにも利用されていました。同社が検索分野の年次アップデートで明らかにしたところによると、2026年にはAIモードの平均クエリ長が通常検索の約3倍となり、AIモード自体も月間10億ユーザーを超えたとしています。
AI経由の流入だけで判断してはいけない
AIO対策のROIを考えるとき、最も分かりやすい指標は「AIからWebサイトへの流入」です。実際、2026年5月からGoogle アナリティクスのデフォルトのチャネル グループには「AIアシスタント」という専用チャネルが追加されています。ChatGPT、Gemini、Claudeなど認識されたAIアシスタントからのアクセスについて、Google アナリティクスでは「ai-assistant」というメディアとして分類できるようになりました。
ただし、このAI経由の流入だけを見るとAIO対策の影響を過小評価する可能性があります。AIでブランドを知ったユーザーが必ずAI回答内のリンクをクリックするとは限らないからです。たとえば、ChatGPTでブランドを知る→翌日Googleでブランド名を検索→公式サイトを訪問、という経路の場合、サイト訪問はAI経由の流入としては計測されません。
したがって、AIO対策では「AI経由の流入=測定可能なAIO成果の一部」と捉えるのが適切です。
AI経由ユーザーの価値にはばらつきがある
AIO対策のROIを説明する際によく引用されるデータの一つに、Semrushの調査があります。Semrushは自社データの分析結果として、生成AI経由の訪問者の平均コンバージョン価値が従来のオーガニック検索訪問者の4.4倍だったと報告しています。
ただし、「AI経由ユーザーはSEO経由ユーザーの4.4倍価値がある」と一般化するのは避けたほうがよさそうです。Adobeの米国小売データを見ると、その理由がよく分かります。
Adobeが公表した分析によると、2025年5月時点では生成AI経由ユーザーのコンバージョン率は非AI経由より22%低い状態でした。ところが10月時点のデータでは状況が逆転し、生成AI経由ユーザーのCV率は非AI経由より16%高くなりました。さらに業界横断の分析では、2025年ホリデーシーズンには31%高かったとAdobeは報告しています。
つまりAI経由流入の価値は、時期、業界、商材、ユーザー行動によって変わります。外部調査のCVRをそのまま自社のROIシミュレーションに使用することは避けたほうが安全です。
ブランド推薦率とKPIツリー
KPIツリーで因果を仮説として扱う
ブランド推薦を目的としたAIO対策では、次のような因果構造を置くと整理しやすくなります。

AIO投資 → AI上でのブランド露出・推薦増加 → ブランド認知・比較候補への入り込み → 指名検索・AI経由流入・サイト訪問 → 問い合わせ・資料請求・トライアル → 商談 → 受注 → 増分利益 → ROI
ここで大切なのは、それぞれを「因果関係が証明されたもの」として扱わないことです。
たとえば、ブランド推薦率が20%から60%に上昇し、同じ時期に問い合わせが20%増えたとしても、「ブランド推薦率が上がったから問い合わせが20%増えた」とは断定できません。広告、SEO、PR、季節性、価格変更、営業活動など他の要因が影響している可能性があるためです。したがって、KPIツリーは、成果を追跡するための仮説モデルとして利用します。
この点は、ブランド広告の効果測定とも似ています。テレビCMや純広告も、視聴した人が最終的に購入に至ったかどうかを厳密に因果証明することは困難ですが、多くの企業は「認知→好意→購買」という仮説モデルと、先行指標の継続的なモニタリングをもとに投資判断を行っています。
AIO対策も同様に、因果関係を完全に証明できないことは、この仮説モデルに基づいて投資判断すること自体を否定する理由にはなりません。重要なのは、仮説を検証可能な状態に保ち、データが蓄積するにつれて仮説の精度を上げていくことです。
ブランド推薦率は重要だがROIではない
たとえば、自社にとって重要な50個のプロンプトを設定したとします。そのうち10プロンプトで自社が推薦されている場合、ブランド推薦率は20%です。
AIO対策後、30プロンプトで推薦されるようになれば、ブランド推薦率は60%になります。これは明確なAIO施策成果です。
しかし、推薦率が20%から60%に上がったからといって、ROIが3倍になったわけではありません。ブランド推薦率はあくまで、将来の事業成果につながる可能性を測る先行指標だからです。この区別は、経営層への説明でも重要です。
ただし、先行指標としての価値も無条件ではありません。対象プロンプトの選び方次第で、その意味は変わります。実際にはほとんど聞かれない質問ばかりを追いかけていれば、推薦率が上がっても事業インパクトにはつながりにくくなります(プロンプトの市場規模を把握しにくいという課題は、前の章で述べた通りです)。
当社のDolphinX AIOでプロンプト別のブランド推薦率・引用率をモニタリングしてみましょう。
AIO・LLMO対策の「ROI計算式」と業種別シミュレーション
ROI計算式
ROIの基本式は次の通りです。
ROI=(増分利益-AIO投資額)÷AIO投資額×100
ここでいう「AIO投資額」には、計測・分析ツールの利用料だけでなく、コンテンツ制作やプロンプト設計にかかる社内工数も、人件費として含めて計算することをおすすめします。工数を投資額に含めないと、ROIが実態より高く見積もられてしまいます。なお、AIO対策の費用相場を確認したい場合は、LLMO対策の費用相場を解説した記事も参考になります。
たとえば、年間AIO投資額:360万円、AIO対策によって生まれたと合理的に判断できる増分粗利:600万円の場合、
(600万円-360万円)÷360万円×100=約66.7%
となります。ここで売上ではなく「粗利」を使う理由は、売上すべてが企業の利益になるわけではないからです。経営判断としてより厳密に見るのであれば、売上より利益ベースで評価したほうが合理的です。
BtoBでは「商談」から考える
BtoB企業では、Webサイトから直接売上が発生しないケースも多くあります。その場合は、増分商談数×商談受注率×1受注あたり平均粗利、で期待増分利益を計算できます。
たとえば、増分商談:年間10件、商談受注率:30%、平均粗利:200万円の場合、
10件×30%×200万円=600万円
が期待増分粗利となります。年間AIO投資額が360万円なら、
(600万円-360万円)÷360万円=約66.7%
です。ただし最大の問題は、「その10商談は本当にAIO対策によって増えたのか」という点です。ここがAIO対策のROI測定で最も難しい部分になります。
業種別に見るAIO・LLMO対策のROIのシミュレーション例
ここまでの考え方を、実際の数字に当てはめるとどうなるかを、3つの業種でシミュレーションしてみます。以下はいずれも、説明のために作成した架空のシミュレーション例であり、特定の実在企業の実績ではありません。また、ここで示す増分は「AIO対策による成果とみなした場合」の試算であり、他の要因の影響を排除できているわけではない点にご注意ください。
投資額はすべて年間60万円で揃え、業種ごとの受注単価・商談率・商談受注率・粗利率の違いによって、ROIがどう変わるかを見る構成にしています。
| 業種 | 導入前総数 | 導入前AI経由 | 導入後総数 | 導入後AI経由 |
|---|---|---|---|---|
| 製造業 | 38件 | 5件 | 60件 | 20件 |
| SaaS | 100件 | 8件 | 130件 | 35件 |
| 注文住宅 | 15件 | 2件 | 27件 | 12件 |
製造業:受注単価580万円、商談率64%、商談受注率24%、粗利率20%と仮定すると、AI経由の増分(+15件)を対象にしたROIは約345%、問い合わせ全体の増分(+22件)で見ると約553%になります。
SaaS:契約単価90万円、商談率70%、商談受注率20%、粗利率75%と仮定すると、AI経由の増分(+27件)を対象にしたROIは約325%、問い合わせ全体の増分(+30件)で見ると約373%になります。SaaSは受注単価こそ製造業より小さいものの、粗利率が高いため、近い水準のROIになっています。
注文住宅:受注単価3,500万円、商談率55%、商談受注率13%、粗利率20%と仮定すると、AI経由の増分(+10件)を対象にしたROIは約734%になります。問い合わせ件数自体は少ないものの、1件あたりの受注単価が桁違いに大きいため、他の2業種よりも高いROIになりました(問い合わせ全体の増分で計算するとさらに高い数値になりますが、単価の大きさによって振れ幅が大きくなりすぎるため、ここではAI経由ベースの数字のみを示しています)。
3業種を並べてみると
| 業種 | AI経由ベースのROI | 総数ベースのROI |
|---|---|---|
| 製造業 | 約345% | 約553% |
| SaaS | 約325% | 約373% |
| 注文住宅 | 約734% | ― |
同じ年間60万円の投資でも、業種ごとの受注単価・商談化率・受注率・粗利率の組み合わせによって、ROIの水準は大きく変わります。自社のROIを見積もる際は、他業種の事例をそのまま当てはめるのではなく、自社の単価・転換率・粗利率を使って計算し直すことが重要です。
AIO・LLMOのROI計算における「増分効果の不確実性」とどう向き合うか
「見なし効果」と「本当の増分効果」を分ける
ROIを考えるうえで重要なのが、「見なし効果」と「本当の増分効果」を分けることです。マーケティング業界ではそれぞれアトリビューション、インクリメンタリティと呼ばれることもあります。
たとえば「ChatGPT経由で10件問い合わせがあった」というのは見なし効果にすぎません。しかし、その10件のうち、AIO対策を実施しなくても発生していた問い合わせが含まれている可能性があります。本当に知りたいのは、「AIO対策をしなかった場合と比較して、何件増えたのか」、つまり本当の増分効果です。
広告効果測定でも同じ考え方が使われています。Google 広告のコンバージョン リフト機能では、広告を見たグループ(接触群)と見ていないグループ(非接触群)を比較し、増分コンバージョン数=接触群のコンバージョン数-非接触群のコンバージョン数として、広告によって追加的に発生したCVを測定します。この考え方は、同社のリフト測定に関するヘルプページでも詳しく説明されています。AIO対策で同じ実験を簡単に行えるわけではありませんが、「施策によって追加的に何が発生したのか」という考え方はROI測定でも重要です。
AIO対策における増分効果を測定する具体的な設計(対照群の作り方や、統計的な検証方法など)は、本記事の範囲を超える発展的なテーマです。まずは次のセクションで説明する損益分岐点の考え方で投資判断を行い、データが蓄積してきた段階で、より精緻な検証方法を検討することをおすすめします。
導入前は損益分岐点で考える
まだAIO対策を実施していない企業では、「AIO対策をするとROIは何%になりますか?」と聞かれても、正確な回答はできません。自社のブランド推薦率と売上の関係がまだ分からないためです。
そこで、導入前はROI予測ではなく、損益分岐点を計算する方法が有効です。たとえば、年間AIO投資額:360万円、1受注あたり平均粗利:120万円なら、
360万円÷120万円=3件
となります。つまり、年間3件の増分受注を生み出せれば投資を回収できることが分かります。
これは、「AIO対策によって年間3件受注できます」という予測ではありません。経営層に提示する問いを、「AIO対策で何件受注できるか?」から、「年間3件以上の追加受注につながる可能性がある投資か?」に変えることができます。不確実性の高い新しいマーケティング施策では、こちらのほうが合理的な意思決定を行いやすくなります。
投資を始めた後も同じ姿勢が有効です。初期段階から「年間1,243万円の売上が増え、ROIは245%になります」といった精密な数字を出そうとするより、どのプロンプトで推薦されているか→推薦状況が改善したか→AI・指名検索・サイト流入に変化があったか→問い合わせ・商談が増えたか→受注・粗利が増えたか、という順番でデータを蓄積していくほうが合理的です。つまり、AIO対策における最初の目的の一つは、「ROIを測れる状態を作ること」とも言えます。
3シナリオで幅を持たせる
どうしても事前シミュレーションが必要な場合は、単一の数字を出すより、複数のシナリオを置く方法が適しています。たとえば年間投資額360万円、平均粗利120万円の場合、次のように整理できます。
| シナリオ | 増分受注 | 増分粗利 | ROI |
|---|---|---|---|
| 下振れケース | 1件 | 120万円 | -66.7% |
| 基本ケース | 3件 | 360万円 | 0% |
| 上振れケース | 6件 | 720万円 | 100% |
ただし、どのシナリオが実現するかを事前に断定することはできません。AIO施策開始後にデータを蓄積し、自社固有のブランド推薦→問い合わせ→商談→受注の関係を検証していく必要があります。
実務で使える補助的な測定方法
2026年現在利用できる測定環境
AIOの測定環境は以前より改善しています。Google アナリティクスでは、2026年5月からChatGPT、Gemini、Claudeなどからのトラフィックを「AIアシスタント」チャネルとして確認できるようになりました。さらにGoogle Search Consoleでは2026年に生成AIパフォーマンスレポートが追加されています。「AIによる概要」や「AIモード」におけるサイトのインプレッションを確認でき、Google検索セントラルのヘルプページによると、2026年8月31日時点で世界中のWebサイトへ展開されたとされています。
そのため2026年現在では、AI上でのブランド推薦状況、Google生成AI検索での表示、AIアシスタントからのサイト訪問、Webサイト上でのCVを、それぞれ観測しやすくなっています。国内外のAIO対策・計測ツールも増えているため、AIO・LLMO対策ツールおすすめ厳選10選のような比較記事で自社に合ったツールを検討するのもひとつの方法です。
ただし、AIの回答を見たものの、回答内のリンクをクリックしなかったユーザーが、その後どのような購買行動を取ったのかまでは完全には追跡できません。この「観測できない部分」が存在することを前提としてROIを設計する必要があります。
指名検索も補助指標にする
ブランド推薦を目的としたAIO対策では、指名検索も重要な補助指標です。たとえば生成AIから、「おすすめのCRMは?」「製造業向け◯◯システムを比較して」と質問したユーザーがブランドAを知ったとします。AI回答のリンクをクリックせず、後からGoogleで「ブランドA」「ブランドA 評判」「ブランドA 料金」と検索する可能性があります。
そのため、AIブランド推薦率の推移と、ブランド名・サービス名の指名検索の推移を合わせて確認する意味があります。ただし両者が同時に上昇しても、それだけでは因果関係を証明できません。テレビCM、広告、展示会、PRなどでも指名検索は増加する可能性があるためです。
問い合わせ時に「AIを見たか」を聞く
特にBtoBでは、定量データだけでなく顧客へのヒアリングも重要になります。問い合わせフォームや商談時に、「当社をどこで知りましたか?」という質問を追加する方法があります。ChatGPT、Gemini、Google AI、Copilotなどを選択肢に含めることで、アクセス解析では把握できなかったAI起点の顧客を発見できる可能性があります。
ただし、人間の記憶による自己申告であるため、これも完全な測定方法ではありません。GA4、Search Console、AIOモニタリングデータ、CRM、顧客アンケートなど複数のデータを組み合わせて判断することが重要です。
経営層への説明と、避けたい考え方
上司・役員への説明では「4つ」を示す
AIO対策について社内稟議を通す場合、単に「生成AIが伸びています」と説明するだけでは十分ではありません。経営判断に必要なのは、市場機会、現在の露出状況、投資回収の仮説、測定計画です。たとえば次のように整理できます。
| 項目 | 説明例 |
|---|---|
| 市場機会 | 顧客が生成AIを情報収集・比較・ブランド選定に利用し始めている |
| 現在の露出状況 | 重要50プロンプトのうち、自社ブランド推薦率は現在20% |
| 投資回収の仮説 | 年間投資360万円。平均粗利120万円なら3件の増分受注で回収 |
| 測定計画 | ブランド推薦率、AI表示、AI流入、指名検索、商談、受注を継続計測 |
この形にすると、「生成AIが流行っているのでやりたい」という提案から、「投資条件と検証条件を明確にしたマーケティング投資」として説明しやすくなります。
数値を出すには、手動で計測する方法もあるが、ツールで測定した方が客観的で正当な数値になりやすい。当社のDolphinX AIOのようなブランド推薦・引用計測ツールなどを調査用として購入することも選択肢としてあります。
ROI評価で避けたい考え方
AIO対策では、まだ市場全体で確立されていない指標も多いため、数字の扱いには注意が必要です。AIO対策のROI評価では、特に次のような単純な換算に注意が必要です。
- 「ブランド推薦率が10%上がれば、売上も10%増える」という換算(裏付ける一般的な根拠は、現時点では確認できません)
- 「Semrushの調査でAI流入の価値が4.4倍だったので、自社でも4.4倍」という換算(外部の一事例をそのまま自社に当てはめるのは適切ではありません)
- 増分商談・増分受注をAIO対策だけの成果として計上し、同じ商談をSEOや広告、営業など他チャネルの成果としても重複してカウントすること(複数の施策が同じ増分を奪い合う「二重計上」は、マーケティング効果測定で典型的に起こる誤りです)
外部ベンチマークは市場環境を理解する参考資料として利用し、ROIシミュレーションにはできるだけ自社データを使用します。
まとめ:AIO対策のROIは「ブランド推薦から増分利益まで」を見る
AIO対策のROIを考えるときに重要なのは、ブランド推薦率やAI流入だけをROIと考えないことです。最終的なROIは、AIO対策によってどれだけ増分利益を生み出したかによって評価します。一方、AI上でのブランド推薦がそのままサイト訪問につながらないケースもあるため、すべてを直接計測することは難しいのが現状です。
そのため実務では、AI露出→検討→行動→売上→ROIというKPIツリーを作り、各段階の変化を追っていくことが重要です。導入前にROIを求められた場合も、根拠の薄い売上予測を作る必要はありません。
年間投資額と1受注あたりの粗利から、「何件の増分受注が生まれれば投資を回収できるか」を計算すれば、経営判断に必要な投資条件を明確にできます。
AIO対策では、「必ずこれだけ売上が増える」と予測することよりも、「どの状態になれば投資成功と判断するのか」を事前に定義することが重要です。そして施策開始後に、ブランド推薦率、生成AIでの表示、AI経由流入、指名検索、問い合わせ、商談、受注を継続的に測定することで、自社固有のAIO対策のROIモデルを構築していくことができます。
ただ、ROI至上主義になってしまっては、このAI検索対策の取り組みは前に進みませんし、実際にROIに拘らず、とにかく仮説ベースで前に進めた企業が成果を出しているケースも多くありました。AI検索を利用するユーザーが増えているという事実を受け止めて、テストマーケティングの位置付けで、AIO・LLMOに取り組む姿勢が実は重要だとも筆者は考えています。



