セッションタイトル:We analysed 10,000,000 AI search results: here’s what we found(和訳:Generative AI & GEO──新たなSEO競争とその勝ち方)2025年春、英国で開催されたBrightonSEOにおいて、株式会社メディアリーチは、世界中から集まった数百人のマーケターたちと共に、AIによって変わりゆく検索の未来を探りました。その中でも特に注目を集めたのが、米バーモント州のProfound社創業者Josh Fusco氏によるセッション、“10 Million AI Search Results: The New Rules of SEO”(1,000万件のAI検索結果が示す、SEOの新ルール)です。Fusco氏は、ChatGPT、Google、Perplexity、Microsoftなど複数のプラットフォームにわたる1,000万件超のAI生成検索結果を分析した調査結果を発表しました。本レポートは、株式会社メディアリーチのSEOコンサルタント・内田綾香が執筆したもので、当セッションの主要な発見をわかりやすくまとめ、AI回答エンジンが検索における可視性・権威性・コンテンツ戦略のルールをいかに根本から変えつつあるかについて考察しています。1. エグゼクティブサマリーこのデータ主導のセッションでは、米バーモント州のJosh Fusco氏(Profound創業者)が登壇し、ChatGPT、Google、Perplexity、Microsoftを含む複数のプラットフォームにわたって、4,100万件以上のAI生成回答を分析した結果を共有した。そのプレゼンテーションでは、AI検索が従来のSEOとは構造的にもランキング要因の点でも根本的に異なることが示された。特に注目されたのは、従来のSEO指標であるトラフィックや被リンクが、AI検索での可視性とはほとんど関係がなく、場合によっては逆相関すらあるという意外な結果だった。Bingによるインデックス、llms.txtプロトコルの実装、リスティクルや比較形式といったAIに最適化されたコンテンツ設計が、AI検索での成功には欠かせないということが強調された。また、検索そのものが大きく変化しているという証拠として、Googleのシェアが減少し、ChatGPTの利用が400%増加したという事実も提示された。AI回答エンジンがユーザーとWebサイトの間に介在する新たなパラダイムが到来し、情報の発見やエンゲージメントの在り方が変わりつつあることが明らかになった。2. セッション詳細セッションタイトル:We analysed 10,000,000 AI search results: here’s what we found(和訳:Generative AI & GEO──新たなSEO競争とその勝ち方)講演者:Josh Fusco(Founder, Profound)日時:2025年4月11日(金)15:20会場:Brighton Centre, Auditorium 1イベント:BrightonSEO Spring 2025セッションリンク:https://brightonseo.com/sessions/the-future-of-search3. レポート詳細3-1. 背景と文脈このセッションは、AI検索エンジンが従来の検索とどのように異なるかという不確実性をテーマにしていた。Fusco氏は、自社がマーケターのAI検索環境における可視性の理解と最適化を支援していることを紹介した。彼は、Googleが数十年ぶりに市場シェアを減少させ、同時期にChatGPTが400%の成長を遂げたという劇的な変化を示しながら、この分析の重要性を強調した。これは、情報発見の仕組みが根本から変化していることを意味する。従来の「リンクを通じてWebサイトを訪問する」検索モデルと、AI回答エンジンがWebサイトとユーザーの間に入り込み、「正誤の判断」「要約」「ブランド選定」まで担う新たな検索体験との違いが対比的に示された。3-2. 主なメッセージと示唆AI検索と従来のSEOは全く異なる構造で動作しており、同じ戦略は通用しないトラフィックはAI検索での可視性との相関がほぼなく、引用の約5%にとどまる被リンクは驚くべきことに、AI検索での引用との間に逆相関があるBingでのインデックスは、多くのAI検索エンジン、特にChatGPTでの可視化に不可欠llms.txtプロトコルは、AIがWebサイトをどのように読み取るかを制御する重要な手段として注目されているコンテンツ形式の影響は大きく、特にリスティクルや比較形式がAIに引用されやすいソーシャルメディアやユーザー生成コンテンツ(UGC)は、状況に応じてAI可視性に強い影響を与えるAI検索の評価基準は現在形成中であり、今が優位性を築くチャンスである3-3. ビジュアル資料とスライド内容図1:ChatGPTがBingやWebGPT経由で検索結果を取得する構造の概要図2:ChatGPTとGoogleのSERPにおける一致率は12%にとどまる図3:トラフィックとAIによる引用の相関は5%未満図4:比較リスティクルがAI検索で最も多く引用される形式であることを示すデータ図5:AI検索の今後に関する予測(エージェント体験、モデル文脈制御プロトコルなど)図6:AI検索は今後のデジタルマーケティングにおける最大の成長機会になるというメッセージ3-4. SEO実務への示唆短期的な対応:・自社サイトがBingにインデックスされていることを確認・llms.txtを実装し、AIクローラーに明確な指示を与える・意味を内包したセマンティックなURLを設計し、メタ情報がなくても内容が伝わるようにする・リスティクル形式や比較形式のコンテンツを優先的に制作する長期的な対応:・AI検索での可視性を、従来のSEO指標とは別にモニタリングする体制を整える・競合がどのプラットフォームでAIに引用されているかを継続的に追跡する・Redditなどの影響力のあるUGCに戦略的にコメントを投稿する・AIエージェントの進化を見据えて、コンテンツ構造やプロトコル設計を継続的に見直す3-5. 会場での印象会期終盤にもかかわらず、メインシアターは多くの参加者で埋め尽くされており、AI検索に対する関心の高さがうかがえた。Fusco氏は、複雑な技術的概念を具体的な事例やデータを交えて分かりやすく解説し、エネルギッシュなプレゼンテーションを行った。特に、llms.txtプロトコルの役割や、「被リンクがAI引用にマイナスの影響を与える可能性がある」という発見には、多くの参加者が反応を示していた。3-6. 所感このセッションで最も印象的だったのは、従来のSEOの常識を、膨大なデータをもとに明確に否定した点である。被リンクがAI可視性と負の相関を持ちうるという発見は、過去20年以上にわたって信じられてきたSEOの原則を根底から揺るがすものであり、私たちがコンテンツ戦略を再構築する必要があることを示唆している。特に印象的だったのは、Redditスレッドでのコメントによって企業の可視性が急増した事例であり、今後はSEO・SNS・PRの境界がますます曖昧になっていくことを強く感じた。また、Fusco氏が強調した「いま動くべきタイミング」というメッセージは、まさにAI検索の黎明期におけるチャンスを象徴しており、競合が適応しきる前に主導権を握る意義を再認識させられた。4. 補足資料Speaker Deck(Josh Fusco):https://speakerdeck.com/joshbly/josh-blyskal-profound-we-analyed-10000-000-ai-search-results-dot-dot-dot